価格改定について、正直にお話しします。

福梅プレス

2026年9月1日、梅干し商品の価格を改定させていただきました。

日頃からご愛顧いただいている皆さまに、ご負担をお願いすることになり、心苦しく思っています。そのうえで、なぜ今回この判断をしたのか。

きちんと、正直にお伝えしておきたいと思います。

蓋を開けてみたら、想定の半分でした

今年の梅は、4年続けての不作でした。
7月の記事では、紀南全体で平年の4割ほど、と書きました。

【2026年】3年連続の凶作でした。今年も、紀州の完熟梅を漬け込みました
平年のわずか四割という現実 …2026年の梅収穫も、6月半ばごろには終了しました。まず、お伝えしなければならないことがあります。今年もまた、凶作でした。これで三年連続です。紀南全体で、収穫量は平年のわずか4割ほど。近年でも記憶にないほど、厳…

3年連続の凶作を経て、これでも記憶にないほど厳しい数字です。

けれど、実際に蓋を開けてみると、私たちの周辺では平年の2割~3割ほどでした。見込みよりも、さらに少なかった。

うちの畑だけの話ではありません。周りの梅仲間に聞いても、同じような声が返ってきます。
産地全体が、非常に厳しい年でした。

8月の天日干しも、稀に見る速さで大方が終わりました。喜ばしいことではありません。
並べる梅が、それだけ少なかったということですから。

皮肉なことに、品質は近年で一番でした

もどかしいのは、今年の梅の質が、近年で一番と言っていいほど良かったことです。

一昨年、去年も厳しい年でした。
不作で量が採れないところへ、雹が降り追い打ちをかけた。
数が少ないうえに、残った実にも傷がつく。量と質を、同時に削られました。

それでも、お届けするものの質は落としませんでした。

傷んだものは弾き、通せるものだけを通す。手元に残る量はさらに減りましたが、皆さまにお届けした梅干しについては、胸を張れるものだけをお送りしてきたつもりです。

そして今年は、雹被害もほぼありませんでした。
皮も薄く、果肉もしっかり乗っている。作り手として、これ以上ないほど良い梅が上がってきました。

ただ、量がない。

良い梅ができた年に、その良い梅が少ない。
作り手として、これほどもどかしい年もありませんでした。

一番の要因は、梅そのものです

包材も、燃料も、運賃も上がりました。それは事実です。
けれど、今回の価格改定の一番の要因は、梅そのものです。

4年続けての不作で、紀州南高梅の価格は大きく高騰しました。

昭和の頃にも、梅が高騰し「青いダイヤモンド」と呼ばれた時期があったと聞きます。
今年は、その頃を知る人たちが口を揃えて「あの時以上や」と言う年です。

ただ、値段が上がったというだけの話ではありません。
産地全体で、限られた梅を取り合うような状況になっています。

平年より大幅に収穫量が少ないのですから、当然です。
ただ値段がどうこうという以前に、そもそも紀州南高梅そのものが足りていないのです。

長く梅屋をやってきましたが、産地がこれほど張りつめた年は記憶にありません。

それでも私たちが今年も梅を漬けられたのは、自社農園と、真摯に梅に向き合う長年の仲間の助けがあったからです。

加えて、畑から食卓まで

そのうえで、梅を実らせ、漬けて、お届けするまでのすべてが上がりました。

肥料、包材、燃料、運賃、製造にかかる費用。

国際情勢の影響は、思っていたよりも身近なところに出ました。
梅干しを入れるパック。封をするガムテープ。紙袋。作業に使う手袋などなど。

どれも、あって当たり前のものでした。
その一つひとつが値上がりし、いつ届くのか、そもそも入ってくるのかさえ分からないこともありました。

商品はできている。けれど容器がない。
そんな心配を、まさか自分たちがすることになるとは思っていませんでした。

梅が採れず、産地全体で足りていない。
そこに、畑から食卓までのあらゆるコストが同時に乗ってきた。それが今回の厳しさです。

去年は、上げませんでした

実を言うと、この状況は去年から始まっていました。

昨年の時点ですでに三年続けての不作で、原料も資材も上がっていました。
それでも私たちは、価格を据え置きました。

1年、我慢しよう。
来年きっと豊作になる。そう考えて決めたことでした。

梅は、1年ごとに表情を変える果実です。何年も続けて不作になることのほうが、本来は異常です。だから今年に賭けました。

その賭けに、負けました。

今年もまた、不作でした。
それどころか、見込んでいた量にも届かなかった。
据え置きで飲み込んだ一年分の重さが、そのまま今年に乗ってきた形です。

一年は耐えられました。けれど、2年は無理でした。
そこまで引っぱったうえでの、今回の価格改定です。

何を削らなかったか

価格を据え置く方法は、実はあります。
原料の品質を下げる。工程を減らす。手間のかかる部分を省く。
どれも、やろうと思えばできることです。

けれど、うちはそれをしませんでした。

今年のように原料が足りない年は、「まあ、これくらいなら」と思いたくなる梅が、必ず出てきます。数がないぶん、通してしまいたくなる。

それでも、弾きました。

品質を落として値段を守るか、値段を上げて品質を守るか。

うちは、後者を選びました。

私がそう選んだのは、先代の背中を見てきたからです。

原料が高い年でも、質の落ちた梅は使わない。
短期で見れば、損な選び方です。それでも、これが一番長く続く道だと思っています。

そうやって続けてきたからこそ、お客様が付いてきてくださったのだと思っています。
和歌山の片隅の、決して大きくはない店です。
それでも、こうして全国の皆さまに選んでいただけている。

そして、もう一つ、
昔から続けてきたことがあります。

お客様と、直接やり取りをすることです。

問屋さんに卸して終わり、という商売をしてきませんでした。
だから、届いた梅干しがどうだったか、声がそのまま返ってきます。

酸っぱすぎる。硬い。この大きさが食べやすい。去年のほうが好きだった。
ありがたい声も、耳の痛い声も、直接いただいてきました。

その声を聞きながら、求められているものを一つずつ確かめ、改善を繰り返してきました。
何を守るべきなのかが分かったのは、いつもお客様が教えてくださったからです。

だからこそ、今回のことも、こうして正直にお伝えしています。

「1000年先も、梅をかじろう。」

私たちが掲げている言葉です。

4年続けての不作を目の当たりにすると、この言葉が急に現実味を帯びてきます。

梅は、当たり前にそこにあるものではなくなりつつある。
後継者も年々減り、作り続けられる状態を保つこと自体が、簡単ではなくなってきています。

今年は、農薬を使わずに育てた畑の梅も、漬けることができました。
量は、ごくわずかです。

病害虫に弱い梅を農薬なしで育てれば、実は傷つき、落ち、収穫まで残る数はぐんと減ります。
正直、割に合う仕事ではありません。

それでも続けているのは、この土地で何ができるのかを、自分たちの手で確かめておきたいからです。

目先の一年ではなく、その先を残すために。

価格改定も、同じ話だと思っています。
今年を安く乗り切って、来年、再来年と産地そのものが痩せてしまっては意味がない。

これから先も梅を作り、梅干しを届け続けられる状態を残していく。
そのための判断でもあります。

お願いと、これから

とはいえ、値上げは値上げです。
どれだけ理由を並べても、お客様にとって負担が増えるという一点に変わりはありません。

ご事情によっては、これまで通りにはお求めいただけなくなる方もいらっしゃると思います。ご理解いただけない方がいらっしゃるのも、当然だと思っています。

それでも、この値段でお願いすると決めました。
決めた以上は、その値段に見合うものをお届けする責任があります。
理由を説明したから許してください、という話ではありません。

次に届く一粒が、値段の答えです。

食べていただいたときに「この一粒なら、納得できる」と思っていただけるように。
そこは、どうしても譲れません。
今年の梅は、質だけで言えば近年で一番の出来です。

数が少ないぶん、その一粒に、これまで以上の手をかけます。そして、もし高いと感じられたなら、そのまま教えてください。

正直に申し上げると、いただいた声で値段をすぐ下げられるわけではありません。
それでも、どう感じられたかは知っておきたいのです。

量目のこと、詰め方のこと、お届けの形。
値段そのもの以外にも、出来ることはまだまだあると考えています。

私たちが本当に守りたいのは、値段ではありません。

皆さまの「毎日の一粒」です。

それを途切れさせずに続けていただけるように。これからも、考え、作り続けます。

今後とも福梅本舗を、どうぞよろしくお願いいたします。

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